働き方・生き方
LIFESTYLE ライフ・スタイル
麻生川静男【第1回】リベラルアーツの本来の意味とは? – 奴隷ではなく「自由人」として生きる技術。 – [特集]リベラルアーツ-生きた教養を身につける-
奴隷ではなく「自由人」として生きる技術。 - [特集]リベラルアーツ-生きた教養を身につける-
「自由人が生き抜くために身につける必要がある、相手を説得するための技術」
「リベラルアーツ」とは何か? その理解は人によって大きなばらつきがある。そこで、リベラルアーツ研究の第一人者である麻生川静男氏に、その歴史や中身、現代人にとっての意義、そして身につけ方について伺った。
白谷輝英 ≫ 文 櫻井健司 ≫ 写真
(※本記事は、2018年10月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
リベラルアーツの本来の意味とは?
世の中には、中身をしっかり把握しないまま、「リベラルアーツ」という言葉を使っている人が少なくありません。そこでまずは、リベラルアーツの本来の意味について整理しておきたいと思います。
リベラルとアーツ
リベラルとは、ラテン語で「自由」という意味です。古代のギリシア・ローマでは人は「自由人(市民)」と奴隷に分かれていました。そしてリベラルとは、元来、自由人を指すための言葉でした。
一方、アーツの語源はラテン語の「アルテス」という単語です。アートと聞くと、多くの人は芸術や美術を頭に浮かべるでしょうが、アルテスの意味は「技術」です。つまり、リベラルアーツの元々の意味は、「自由人が身につけるべき技術」ということでした。
自由人が必要を迫られた時代背景
ひとたび戦争に敗れた場合、奴隷は戦利品として敵国に所有され、生き延びることができます。ところが自由人は殺される危険性が高く、運がよくても奴隷に転落するのが常でした。そこで古代ギリシア・ローマの自由人は、強い当事者意識と責任感を持って政治に参加していたのです。とりわけ重視されていた政治課題が、祖国の防衛でした。
自国を守るために必要なのは、武力だけではありません。武力と同様、いや、それ以上に重要なのが、国内外の人々を動かし、味方につける技術です。過去の歴史をひもとけば、演説や交渉によって戦争の勝敗が大きく変わったケースは枚挙に暇がありません。
技術の基本 3学4科
そこでギリシア・ローマの自由人は、文法学、論理学、修辞学という「3学」(トリウィウム)の技術を日々磨いていました。これに、幾何学、算術、天文学、音楽の「4科」(クワドリウィウム)を加えたものが本来のリベラルアーツ、すなわち、「自由人が生き抜くために身につける必要がある、相手を説得するための技術」だったのです。
講師紹介
麻生川 静男(あそがわ・しずお)
リベラルアーツ研究家・元京都大学 准教授・工学博士
京都大学工学部卒業、同大学大学院工学研究科修了、徳島大学工学研究科後期博士課程修了。京都大学大学院在学中に、サンケイスカラシップ奨学生としてドイツ・ミュンヘン工科大学に留学。その際に強烈なカルチャーショックを受け、独力でリベラルアーツに取り組みはじめる。住友重機械工業在職中、アメリカ・カーネギーメロン大学に留学し、同大学工学研究科を修了。その後、カーネギーメロン大学日本校プログラムディレクター、京都大学准教授を経て、「リベラルアーツ教育によるグローバルリーダー育成フォーラム」を設立、運営していた。新著『資治通鑑に学ぶリーダー論~人と組織を動かすための35の逸話』(河出書房新社)など、著書多数。
講師への講演依頼はノビテクビジネスタレントで!
「リベラルアーツ教育によるグローバルリーダー育成フォーラム」を
設立、運営していた。リベラルアーツ研究家、元京都大学准教授、工学博士
麻生川 静男 講師のプロフィールはこちら